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電力自由化で安定供給は守られるの?
電力自由化と聞いて気になることの1つに
「これまでのように電気は安定供給されるの?」
ということがあると思います。
自由化前は各地域の電力会社に安定供給が義務付けられていましたが、自由化後は一体どうなったのでしょうか。
これまでは「地域独占」と「供給義務」がセットだった
電力自由化が始まる前は、地域ごとに全部で10社ある電力会社から電気を買うことしかできませんでした。管轄エリア内の電力販売を独占できる一方で、電力会社には供給義務が課せられていたというわけです。
つまり、「地域独占」と「安定供給義務」はセットになっていたのです。
電気料金についても、設備の維持管理や発電施設の増設等にかかるコストを安定して回収できるよう、国が料金を認可する「認可料金制」となっていました。
電力自由化後、供給義務などは撤廃
電力自由化により、登録した小売事業者であれば電気の販売ができるようになりました。これにより、地域独占体制は消滅。10社の電力会社に課せられていた電力の安定供給義務も、認可料金制も撤廃されました。
安定供給義務が撤廃されたということは、これまでのように安定的に電力が供給されなくなるんじゃないの? と不安になる人もいるかもしれません。
しかし、電気は私たちの暮らしに必要不可欠なエネルギー。そのため、安心して使えるように、必要な部分にきちんとした体制が整えられているんですよ。
安定供給を確保するための3つの措置
電気の安定供給を確保するため、3つの措置が取られています。具体的にどんな内容なのか、早速見てみましょう。
1. 一般送配電事業者に対する措置
一般送配電事業者とは、定められた供給区域内で電線や変電所といった、送配電設備の維持・管理を行う事業者のことです。
発電と小売をつなぐ役割があり、電気の安定供給にも欠かせない存在の一般送配事電業者。電力自由化後も、従来の電力会社による地域独占体制となっています。
1-1. 需給バランス維持義務(周波数維持義務)
電気は、供給する量と使う量が同量となる「同時同量」が原則です。このバランスが著しく崩れると、供給される電力の周波数が不安定になり、最悪の場合は大規模な停電を引き起こしてしまう可能性も。
こういった事態を防ぐために、一般送配電事業者には需給バランスを維持する義務が課せられています。
予想される需要量から、どの発電所でどれだけ発電するのか、細かく調整しながら需給のバランスを維持しています。
1-2. 送配電網の建設・保守義務
当たり前の話ですが、送配電網がきちんと維持管理されていなければ、電気を安定して送ることはできません。また、新たに電源が建設されたり、供給場所が設置されたりした場合には、送配電網も新たに建設する必要があります。
このように、必要に応じて送配電網を建設したり適切に保守する義務が課せられています。
1-3. 最終保障サービス義務
例えば、契約していた電力会社が倒産したり事業廃止となってしまったとき。何もなければ私たちは最悪の場合、誰からも電気の供給を受けることができなくなってしまうこともあり得ます。そうした事態にならないよう、セーフティネットとして一般送配電事業者には最終的な電力供給を実施することが義務付けられています。
1-4. 離島ユニバーサルサービス義務
日本には多くの離島が存在していますが、本土からの電線とつながっていない離島もたくさんあります。都市部に比べると需要家も少ないうえに、本土から直接電気を送ることもできない離島。このため、ほとんどの新電力はこういった離島を供給エリアから外しています。
離島は島内に発電所を設置して発電・供給を行っているため、都市部に比べるとコストもかかります。対策を取らなければ最悪の場合、電力自由化によって事業者がいなくなってしまう可能性も。
こうした事態を避けるために、一般送配電事業者には離島においても都市部同様、安定して電気を供給する義務が課せられています。
このように、人口の少ない地域でも都市部と同じようなサービスが受けられる仕組みのことを「ユニバーサルサービス制度」といいます。ユニバーサル制度は電気以外にも、電話などの通信や郵便など公共性の高いサービスに採用されています。
2. 小売業事業者に課せられている義務
小売事業者に対しても、電力需要をまかなうために必要な供給力を確保することを義務付けています。これには、供給力がないのに電力の販売だけを行う「空売り」を防ぐ目的があります。
供給力が具体的にきちんと確保されているかどうか、次の3つの段階で確認しています。
2-1. 参入段階
小売電気事業者は、誰でも簡単になれるものではありません。国(経済産業省)の登録を受ける必要があります。小売電気事業者として登録する際には、当面の需要想定と供給力をどのように確保するのかといった計画を提出しなければなりません。国はこの計画の内容を厳正に審査。供給能力があると判定された事業者のみ、登録されます。
2-2. 計画段階
登録を受けた事業者は、より具体的な需要想定と供給力計画を提出しなければなりません。
まず、毎年度、今後10年間の年度ごとの需要想定と供給力計画を提出。また、翌年度分については、月次ごとの需要想定と供給力計画も提出する必要があります。
2-3. 需給の運用段階
需給運用段階(実際に電力を供給する段階)においても、需要量に応じた供給ができているかどうか、チェックされます。このとき、供給力が確保できていなければ「インバランス料金」というペナルティ料金が課せられます。さらに、悪質な空売りが見受けられた場合は、登録自体も取消に。
こうしたペナルティを課すことで、小売電気事業者にも責任をもって電力の安定供給に取り組んでもらうような仕組みになっているんですね。
3. 電力広域的運営推進機関による措置
電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)とは、電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進めるとともに、全国大で平常時・緊急時の需給調整機能を強化するために、2015年4月に設立されました(参考:電力広域的運営推進機関ホームページ)。
全ての電気事業者が、広域機関の会員となることが義務付けられています。
全国規模で電力の需給調整を行うことが主な業務内容ですが、将来的に日本全体で供給力が不足する場合に備えて、広域機関が発電所の建設者を公募する仕組みが創られています。
こちらも参考に
⇒災害が起きたとき、新電力はどうなるの?
供給義務撤廃でも、電気の安定供給は変わらない
電力自由化が始まり、従来の10の電力会社に課せられていた供給義務は撤廃されました。それに代わって、現在は市場全体を通して各事業者が責任を持つ仕組みがつくられています。そのため、供給義務が撤廃されても、私たちはこれまで同様、安心して電気を使うことができています。
今後、状況によっては電力会社の倒産や事業撤退もあり得るでしょう。しかし、万が一に備えたセーフティネットもきちんと構築されています。
こちらも参考に
⇒電力会社が倒産! 我が家の電気はどうなるの?
私たちがこれまで以上に安心して、お得に電気が使えるようにとスタートした電力自由化。電力会社が変わっても安定供給はそのまま。電気代だけを節約することができる大きなチャンスです。
新電力の選び方はこちらを参考に
⇒【決定版】5分で分かる新電力の選び方(東電エリア)