破綻した電力会社イメージ
万が一契約している事業者が倒産したり、事業撤退してしまったとしたら、私たちの家庭に届く電気は一体どうなるのでしょうか。

倒産してしまったら、電気は使えなくなるの?

結論から言うと、答えは「NO」。万が一、契約している事業者が倒産してしまっても、電気が使えなくなることはありません。

2020年3月末までは経過措置が取られている

これは、東電などの地域電力会社に、一般家庭への電力供給が義務付けられているため。例えば、契約していた事業者Aが倒産したとします。通常であれば、Aとは別の新しい事業者と契約しなければ、電気が使えなくなってしまう可能性がありますよね。

ですが、新しい事業者と契約するまでの間は、地域電力会社が電気を供給してくれる仕組みになっています。そのため、私たちはこれまでと同じように電気を使うことが可能なのです。

電気料金は経過措置プランの内容で支払う

次の事業者と契約するまでは地域電力会社が電気を供給してくれるので、電気代も地域電力会社に支払います。となると、気になるのは料金体系ですよね。

料金体系は、電力自由化開始前の標準的な料金プラン(経過措置プラン)が適用されます。そのため、場合によっては新電力を利用していたときと比べて、高い料金を支払うことになることも。できることなら、なるべく早く次の事業者と契約して、電気代を抑えたいですね。

経過措置終了後はどうなる?

2020年3月末までの経過措置が終了した後も安心して電気が利用できるよう、セーフティネットが構築されています。経過措置期間中は地域電力会社に供給義務が課せられていましたが、2020年4月以降(予定)は一般送配電事業者に供給が義務付けられることに。新しい契約先が見つかるまでは、この一般送配電事業者から電気を供給してもらうことになります。

なお、一般送配電事業とは、これまでの地域電力会社における送電・配電部門にあたるもの。電線などの建設やメンテナンス、電力需給のバランスを調整したりします。電力の安定供給には欠かせない、とても大切な部分。だからこそ、経済産業大臣の許可を受けなければ一般送配電事業者になることはできません。

電気は私たちの暮らしに欠かせない、大切なライフライン。そのため、電力供給が止まることがないように、仕組みが作られているんです。

過去にあった経営破たんの実例

2016年3月末、新電力としては大手に入る日本ロジテック協同組合が倒産、電力事業から撤退しました。電力自由化により私たちは電力会社を自由に選べるようになりましたが、契約先が倒産してしまったら、我が家に届く電気は一体どうなるのでしょうか。

そもそも、日本ロジテック協同組合とはどういう組織で、なぜ倒産してしまったのでしょうか。

PPSでは国内第6位の大手電力事業者だった

日本ロジテック協同組合は、2007年11月に設立されました。

その後、2009年11月ごろに特定規模電気事業者(PPS)に登録。組合員に対して安価で電気を販売し、2014年度には販売電力量ベースでPPSとして第6位の大手事業者でした。一般企業や自治体など、あわせて1,200ほどの顧客がいたとされています。

そのような大手事業者がなぜ、倒産してしまったのでしょうか。それは、新電力ならではのビジネスモデルに原因があったと言われています。

他社から電気を購入し、組合員に販売

日本ロジテック協同組合は、自前の発電設備を持たない電力事業者でした。自分たちで発電していないのに電気を販売できるの?と、疑問に思うかもしれません。実は発電設備が無くても、他社から電気を一括して調達、再度販売するという形で電気を販売することができるんです。

日本ロジテック協同組合では、この方法を利用して組合員に電気を販売していました。電気というのは、ある程度まとめて一括で調達する方が、個別に電気を調達するよりも安価で済むもの。そのため、組合員も電気代を削減することができるということで、当初は順調に業績を伸ばしてきました。

しかし、電気というのは利益がほとんど出ないもの。そのため、日本ロジテック協同組合は次第に資金繰りが悪化。最終的には各地域電力会社(東電など)への電力購入代金などを支払うことが難しくなり、経営破たんとなってしまったのです。

多くの新電力が同様のやり方をしている

日本ロジテック協同組合の顧客は、一般企業や地方自治体。一般家庭向けに電気の販売をする事業者ではありません。

ですが、同様のことは一般家庭向けの新電力でも十分あり得る話。

実際に、電力自由化を機に新規参入した企業の中には、自前の発電設備を持たない事業者も数多く存在します。中には地域電力会社と業務提携を結んで電気を販売する事業者もいますが、日本ロジテック協同組合と同様のやり方で電気を販売するところが多いのも実情です。

また、自前の発電設備を持っていたり倒産しなくても、一般家庭向けの電力事業から撤退する可能性だってゼロではないですよね。自由化で契約先を変えて、電気代が安くなってラッキー! と安心してばかりもいられないんです。

結局のところ、新電力って大丈夫なの?

2016年4月以降に新たに参入した新電力の中には、倒産した日本ロジテック協同組合と同様の方法で電力を調達・販売する事業者があると書きました。そのため、本当に大丈夫?と不安を覚えた方も多いかもしれません。

そもそも、電気の販売は誰でもできるというわけではありません。国が定めた要件を満たした事業者のみが行えること。つまり、現時点で電力販売を行っている事業者は、この国が定めた要件を満たしている事業者というわけです。

もちろん、国が定めた要件を満たしているから、絶対大丈夫! というわけではありません。しかし、ただ不安に思って何もしなければ、何も変わりませんよね。新電力は、お得な料金やこれまでになかったサービスの提供など、魅力が多いのも事実。積極的に検討することをオススメします。

日頃から電気に関心を持って、万が一に備えよう

契約している事業者が倒産してしまっても、私たちはこれまで同様に電気を使うことができます。だからといって、次の契約先を探さなくてはいけません。「備えあれば憂いなし」ではないですが、日頃から電気や新電力に関心を持っておくことで、万が一の場合にも慌てずに済みますよね。

今後はより多くの事業者や料金プラン、サービスなどが生まれてくることも予想される電力業界。正しい知識を身に付けて、正しい判断ができるようになっておきたいものです。