東京電力エリアで電気料金の誤請求や請求遅延が起きています。これは東京電力パワーグリッドによる計測トラブルが原因。
ただしトラブルを避けるために新電力への乗り換えを延期するのは間違い。そもそも乗り換えずに東京電力の新プランと契約しても同じトラブルが発生します。また、トラブルの発生割合は2%未満。
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目次
トラブル件数は2%未満
電力使用量の未通知は、7月でも2万件前後。2万件と聞くと大きな数字に感じますが、全体約162万件(6月30日時点)からすると、わずか1.2%しかありません。
しかも内訳をみると、一般家庭(低圧)の未通知割合は、
- 東京電力エナジーパートナー
未通知10,265件/全体789,505件=1.3% - その他新電力
未通知10,362件/全体831,372件=1.2%
(6月30日時点、東京電力パワーグリッド発表資料より)
東京電力の新料金プランでも同様に請求トラブル(未通知)が発生しており、その割合は全体の1.2〜1.3%とごく一部だとわかります。
- 請求トラブルはたったの1.2%しか発生していない。
- 請求トラブルを避けるために、東京電力を選ぶのは間違い。
どんなトラブルが起きている?
2016年6月17日、電力・ガス取引監視等委員会は、東京電力パワーグリッドに対して業務改善勧告を行いました。スマートメーターの計測トラブルにより、電気使用量の確定通知が遅れているためです。
東京電力管内の送配電部門を担っている、東京電力パワーグリッド。電気を安定して需要家へ届けるという、重要な役割を担っています。
そのうちのひとつに、電気使用量を計測するメーターの設置や使用量の計測(検針)も。業務改善勧告を受ける要因になったトラブルは、この電気使用量の計測に関係するものです。
システムの不具合で使用電力量が分からない
電力自由化を前に、電力広域的運営推進機関(広域機関)や電力会社では、電力の契約変更に関連する4種類のシステムの開発を行ってきました。このうち、広域機関によるシステムが2種類。残る2種類は電力会社によるもので、東京電力パワーグリッドのような電力会社の送配電部門による託送業務システムと、小売電気事業者のシステムになります。
今回トラブルを起こしているのは、東京電力パワーグリッドの託送業務システム。このシステムの不具合により、誤った電力使用量を通知したり、使用量の通知自体が遅れるといったトラブルが続いているのです。
このトラブルにより、小売電気事業者の中には顧客に対して電気料金の請求ができなかったり、誤って重複して請求してしまうという事態に。東京電力パワーグリッドによると、未通知の件数は減少してきているものの、電気使用量の算定自体が難しい案件も含まれているといいます。電気使用量を算出できない案件については、前年同月の電気使用量を参考にするなど、協議して使用量を決定する方法が考えられています。
東電のトラブルなのに他の小売事業者に影響する理由
トラブルを起こしているのは東電なのに、なぜ、他の小売電気事業者の請求ができない事態になっているのでしょうか。
電気事業というのは、大きく分けて発電部門、送配電部門、小売部門の3部門に分かれています。このうち、送配電部門は現在も規制されていて、従来の地域電力会社が管理することとなっています。そのため、小売電気事業者は地域電力会社と契約し、送配電設備を利用して各家庭へ電気を届けているのです。
こういった仕組みから、電気使用量については小売電気事業者がそれぞれ計測するのではなく、地域電力会社から各事業者へ通知することになっています。そのため、トラブルを起こしたのは東電なのに、他の小売電気事業者にも影響が広がっているのです。
不具合の原因の1つはメーター設置の遅れ
託送業務システムの不具合は1箇所ではなく、複数の箇所で起こっていると考えられています。このうち、不具合の発生要因の1つとされているのが、スマートメーターの設置工事が遅れていることにあるとされています。
電力自由化によって電気の購入先を変更すると、電気使用量を計測するメーターがアナログ式からスマートメーターに変わります。新電力に乗り換えた場合はもちろんですが、地域電力会社が発表している新料金プランに変更した場合も同様です。
このスマートメーターの設置工事を請け負っているのが、地域電力会社の送配電部門。東京電力管内の場合は、東京電力パワーグリッドというわけです。東電管内において設置工事が遅れているため、旧式のアナログメーターのまま新電力や東電の新料金プランを利用している需要家が多く発生してしまいました。そこにシステムの不具合が重なり、各需要家が使っているのがアナログメーターなのかスマートメーターなのか、正確に把握できない事態に。
実は、アナログメーターとスマートメーターでは、電気使用量の算定期間が異なっています。システムトラブルでメーターの違いを把握できないまま使用量を算定した結果、不正確なデータをそのまま小売電気事業者へ通知。通知を受けた小売電気事業者は、誤った電気料金を請求してしまったのです。
誤請求の原因は東京電力パワーグリッドにあるわけですが、私たち需要家から見れば、乗り換え先の小売電気事業者のミスと考えてしまいますよね。結果的に、電力自由化に対する不安や不信感を与えてしまいかねない事態になってしまったのです。
(東京電力パワーグリッド 2016年8月10日掲載)
人海戦術で解決を目指す
現在、東京電力パワーグリッドでは人海戦術でシステムトラブルの解決を目指しています。
例えば、未処理のメーター取替情報については1件ずつ確認し、原因を特定することとしています。さらに、今後同様のトラブルが起こってしまった場合にも対処できるよう、解消手順書を作成したり、人材を育成することも。現在、兼務者を含めて14名体制のところ、60名まで増強する予定です。
更に、30分ごとの電力使用量を取得できたものの、システム内での連携不具合により結果的に未通知となってしまったトラブルも。このトラブルに対しては暫定的な運行支援ツールを開発したり、システム内の不具合箇所の解消、発生原因の特定などを行うこととしています。こちらも、現在10名体制のところ、20名に増強して対応するとのこと。
しかし、最終的にこれら一連の作業が完了するのは、10月末の見込み。もうしばらくの間は、混乱が続くことが予想されています。
このトラブルは新電力ゆえのトラブルではない
今回の東京電力パワーグリッドのシステムトラブルによる誤請求や使用量通知遅延により、電力自由化や契約の切り替えに対して不安に思った人も多いかもしれません。
しかし、このトラブルは新電力ゆえのトラブルではありません。東京電力の新料金プランに切り替えた場合もスマートメーターへの交換が必要になるため、他の小売電気事業者同様に、誤請求や通知遅延が発生しています。
この事態を見て、「トラブルが発生しているから、乗り換えは様子を見てから」と、考えてしまうかもしれません。しかし、新電力ゆえのトラブルではない以上、様子を見る必要はないでしょう。
電気料金やセット割といった他の特典を考えると、少しでも早く乗り換えた方がお得になる方が多い、電力会社の乗り換え。気になる電力会社があれば、早めに乗り換えることをオススメします。
新電力の選び方はこちらを参考に
⇒【決定版】新電力の選び方