電力自由化がスタートしたおかげで、私たちは電気の購入先を自由に選べるようになりました。購入先の選び方は人それぞれ。料金サービス面も気になるけれど、エコな電気を使いたい! と思っている人も多いのでは?
エコな電気を使うためには、どういった点に注目して選べばいいのでしょうか。
目次
日本における主な発電方法は4つ
現在、私たちが使っている電気は、主に4つの方法で発電されています。それぞれの発電方法に、長所と短所があります。
① 火力発電
石油や石炭、天然ガスなどを燃料として発電する方法。現在、日本で最も多く利用されている発電方法です。
火力発電では石油や石炭などを燃やし、水を熱します。水を熱すると水蒸気が発生しますが、この水蒸気を利用してタービンを回転させることで発電する仕組み。日本にはこれらの資源が少ないため、燃料は輸入することで賄っています。
火力発電の長所
火力発電では燃料を燃やす量を調整することで、発電量を調整することが可能。そのため、電気を多く使うときには発電量を増やし、逆にあまり使わないときには減らすことが比較的簡単にできるのです。
火力発電の短所
近年、地球温暖化が問題となっていますが、燃焼によって多くの温室効果ガスが発生。それだけでなく、二酸化窒素など大気汚染の原因となる物質も排出しています。火力発電の中でもLNG(液化天然ガス)によるものは排出量も少なめですが、それでも他の発電方法に比べるとやはり多くなっています。
また、化石燃料は有限の資源であるため、永久的に利用することはできません。
② 原子力発電
原子力発電は、およそ50年前から世界中で利用されている発電方法。水を熱して水蒸気を発生させ、その水蒸気でタービンを回して発電するという仕組み自体は、火力発電と同じです。
火力発電と違うのは、燃料が化石燃料ではなく、ウランという放射性物質を利用する点。ウランが核分裂するとき、熱が発生します。その熱を利用して水を熱するという方法です。
原子力発電の長所
原子力発電では、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出することがありません。そのうえ、大量の電気を効率的に発電することができます。発電すること自体は環境に優しいと言えます。
また、燃料となるウランは再処理することで再度、発電に利用することが可能。日本のように資源が少ない国では、とても重宝する発電方法です。
原子力発電の短所
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電の短所が広く知られるようになりました。
例えば、万が一事故が起こるとその被害は広範囲に及び、場合によっては私たちが立ち入ることが難しくなります。また、事故の終息には長い時間と多くの人手が必要です。
事故が起こらなくても、使い終わった発電所はすぐに解体できません。さらに、使用済み核燃料の廃棄方法が決まっていないなど、まだ多くの解決しなければならない問題があるのも原子力発電の短所と言えるでしょう。
「発電自体は環境に優しい」と書きましたが、トータルで考えると本当に環境に優しいのか、疑問が残ります。
③ 水力発電
水力発電はその名の通り、水の流れる力を利用して発電する方法。水の流れという自然にあるものを利用しているので、再生可能エネルギーの一つでもあります。
日本は山や川が多いので、水力発電はよく利用されています。実はダムも水力発電所の一つ。誰もが一度は目にしたことがある発電方法なんですよ。
水力発電の長所
なんといっても、自然のエネルギーを利用しているので、環境に優しいという点が挙げられます。温室効果ガスも大気汚染物質も排出しない発電方法です。
さらに、山や川が多い日本に向いている発電方法とも言えます。
水力発電の短所
水力発電は自然エネルギーを利用した発電方法ですが、発電所を作る際は自然環境を破壊してしまう可能性があります。特に、ダムを建設するとなると大規模な工事が必要。自然に優しい発電所を作るために、環境を破壊するという矛盾が生じてしまいます。
④ 新エネルギー
再生可能エネルギーのうち、太陽光・地熱・風力など、水力発電以外のものを新エネルギーとよんでいます。既に普及している水力発電と違うのは、新エネルギーの普及には経済的な支援が必要という点です。
新エネルギーの長所
水力発電同様、環境に優しいという点が挙げられます。発電に利用するエネルギーは全て国産で、太陽光や風力などは無尽蔵。実は日本のエネルギー自給率はわずか5%前後。新エネルギーを利用した発電の普及が進むことは、エネルギー自給率を上げることにも繋がります。
新エネルギーの短所
再生可能エネルギー全般に言えることですが、気候や自然条件によって発電量が左右される点が挙げられます。
また、発電設備の建設には多くの費用がかかることも短所の一つ。設備はどこにでも設置できるわけではなく、発電効率などを考え、一定の条件を満たした場所に限られます。
日本全体での供給量の割合は?
私たちが日常利用している電気。一体どんな発電方法で作られた電気なんでしょうか。
資源エネルギー庁が発表している「エネルギー白書2016」によると、2014年度のデータで
- 力発電: 87.8%
- 水力発電: 9.0%
- 水力以外の再生可能エネルギー: 3.2%
となっています。原子力発電は全て停止していたため、原発由来の電気はゼロでした。現在は再稼働の原発があるため、今後、原発由来の電気も増えてくると考えられます。
エコな電気かどうかを見分けるポイントは2つ
日本全体で見たときの供給量の割合は先ほど書いた通りですが、電力会社によっても異なります。では、環境に優しいエコな電気を使いたい! と思ったとき、どこで見分ければいいのでしょうか。
見分けるポイントは「電源構成比」と「CO2排出係数」の2つになります。
① 電源構成比を調べる
電源構成比とは、その会社が販売する電気が「どういった発電方法で発電されたものか」を示すものです。電源構成比を見たときに、水力発電などの再生可能エネルギーの割合が高ければ、それだけ「エコな電気」と言えます。
ただ、EUなどでは電源構成比の開示が義務化されていますが、日本の場合は義務ではありません。そのため、会社によっては開示していない場合も。とはいえ、環境に優しい電気を売りにしている会社であれば、その根拠となる電源構成比も開示するのではないでしょうか。
電源構成比の内容はもちろんですが、開示しているかどうかもポイントになると言えるでしょう。
② CO2排出係数を調べる
エコな電気かどうかを見分けるポイントの2つ目は、CO2排出係数を調べること。CO2排出係数とは、発電の際にどれだけのCO2(二酸化炭素)を排出したかを示す数値です。地球温暖化の原因ともなるCO2。CO2排出係数が小さいほど、環境に優しい電気と言えます。
注意点としては、原子力発電もCO2を排出しない発電方法であるということ。「温室効果ガスを発生しない」という点では、確かに環境に優しい発電方法と言える原子力発電。そこをそのまま「環境に優しい」と考えるかどうかは、あなた次第です。
「再生可能エネルギーのみ」は難しい
日本における再生可能エネルギーによる発電の割合は、水力発電も含めて12%程度。そのため、再生可能エネルギーによって発電された電気のみを使うというのは、実質的に不可能に近いと言えるでしょう。
それでも、再生可能エネルギーなど環境に優しい電気を積極的に利用することは、その発電の普及を後押しすることにもつながります。電力会社を選べるようになった今は、あなたの価値観に合った電力会社を選べるのです。