電力自由化をきっかけに、これまではあまり考えられなかった電力会社とガス会社の提携が進んでいます。その理由と実際の業務提携を解説します。

1 提携を進める電力会社とガス会社

これまで私たちに電気を供給していた地域電力会社。電力自由化で、これまでの供給エリア内の顧客を他社に奪われる立場となりました。

そんな地域電力会社は、電力自由化をきっかけにガス会社との提携をスタート。これには理由がありました。

1-1 地域電力会社が提携を進める理由

電力会社がガス会社との提携を進める最大の理由は顧客の確保。

電力自由化で、地域電力会社はこれまで供給エリア外だった地域にも電力を供給できるようになりました。東京電力であれば、中部電力や関西電力エリアで販売をスタートしています。

こういった従来の供給エリア外で新たに電力販売をスタートさせる場合、顧客ゼロからスタートしていては時間も労力もかかってしまいますよね。そこで地域とのつながりの強いガス会社と提携し、お得なプランを提供することで、顧客をスムーズに確保できるようになるというわけです。

これまでの供給エリア内においても、ガスとセットで契約するとお得になるプランを提供することで、顧客離れを防ぐという狙いがあります。

1-2 ガス会社が提携を進める理由

ガス会社もまた、電力会社と提携する最大の理由は顧客の確保です。

2016年4月の電力自由化に続き、2017年4月には都市ガスの小売り自由化がスタート。電力自由化で電力会社に起こったようなことが、次はガス会社でも起こりうるということなんですね。

さらに都市ガスで利用されるLNGの購入価格軽減も理由の1つ。

LNGは、ガス会社よりも電力会社の方が多く輸入しています。電力会社がガス?と思うかもしれませんが、現在、電気の多くは火力発電で作られています。そのうち、環境負荷が少ないLNGが燃料として多く利用されているのです。

こういった背景からも、双方の提携が進んでいるのです。

2 業務提携の実際のところは?

では実際のところ、どういった会社が提携しているのでしょうか。

2-1 東京電力

東京電力では関東エリアを中心に、ガス会社(LPガス)との提携を進めています。

関東エリア

関東エリアでは、現在12社と業務提携しています。

業務提携によるサービス内容としては、電気とガスのセット割。ガス以外でも、提携先企業が提供しているサービスとのセット割もあります。

いずれも、東京電力が提供する料金プラン「スタンダードプラン」「プレミアムプラン」と、各ガス会社が提供するLPガスやインターネット等をセットで利用すると、お得なセット料金が適用になります。

なお、提携先の12社は次の通りです。

① LPガスとセットでお得になる9社

株式会社カナジュウ・コーポレーション、河原実業株式会社、関東エア・ウォーター株式会社、北日本ガス株式会社、新日本瓦斯株式会社、東彩ガス株式会社、日東エネルギー株式会社、日本瓦斯株式会社、東日本ガス株式会社

② LPガスやその他サービスとセットでお得になる3社

川島プロパン株式会社、サンワ株式会社、レモンガス株式会社

川島プロパン株式会社では、電気と「LPガス」「宅配水」「その他おうちのリフォーム」をセットで契約すると、お得になります。

サンワ株式会社は、電気と「LPガス」「光回線サービス」をセットで契約すると、セット割引が適用に。

レモンガス株式会社は、電気と「LPガス」「アクアクララ(宅配水)」のセットで契約するとお得になります。電気+ガス+アクアクララの場合は、年間で最大10,368円お得に。電気+ガスなら、年間最大6,480円。電気+アクアクララなら、年間最大3,888円お得になります。

関西エリア

現在、関西エリアで提携しているのは伊丹産業株式会社の1社のみ。こちらはセット割などの提供はなく、伊丹産業グループの各事業所で料金プランの申し込みを受け付けています。

2-2 中部電力

中部電力は、国内でも最大手のエネルギー会社である国際石油開発帝石(INPEX)と電力販売事業で提携しています。

INPEXは原油や天然ガスを掘り当てる探鉱活動から、ガス田などの買収、採掘、運搬などを手掛けている企業。中部電力とINPEXが提携することで、INPEXからLNGを調達している都市ガス会社とも提携するというわけです。

この方法で、中部電力は関東エリアの都市ガス会社9社と提携。提携した9社の顧客数はおよそ30万件で、今年度はこのうち2万件の獲得を目指すとしています。

【中部電力提携先】
社名供給区域顧客数(件)
足利ガス(株)栃木県足利市約17,000
伊勢崎ガス(株)群馬県伊勢崎市約11,000
入間ガス(株)埼玉県入間市、飯能市および狭山市の一部約18,000
青梅ガス(株)東京都青梅市約21,000
桐生ガス(株)群馬県桐生市、みどり市および太田市の一部約26,000
埼玉ガス(株)埼玉県深谷市の一部約7,000
佐野ガス(株)栃木県佐野市約9,000
日高都市ガス(株)埼玉県日高市の一部約7,000
武州ガス(株)埼玉県川越市、所沢市、狭山市、
ふじみ野市、鶴ヶ島市、日高市、
飯能市、比企郡川島町、比企郡吉見町、
比企郡小川町、入間郡毛呂山町
約206,000

提携先のガス会社では、ガスと電気のセット割を提供しています。

2-3 東京ガス

東京電力管内で順調に契約数を伸ばしている東京ガス。東京ガスも、東電以外の電力会社との業務提携を進めています。

2016年4月には関西電力と提携。当分の間はLNGの調達で提携することになっています。今後は共同で火力発電所の建設も。さらに、将来的には北米やアジアで発電所を共同建設することも検討しています。

ただ、現時点で私たちの光熱費に関わるようなセット割などは発表されていません。原発の再稼働が思うように進まない関西電力が、火力発電の燃料であるLNGを安定的に調達するために提携したとも言えるでしょう。

3 ガスの小売り自由化で提携は増える

電力会社とガス会社の提携は、販売網拡大によるもののほかに、燃料の安定調達や技術開発など、様々な目的があります。今回、電力自由化に伴って多くの企業が業務提携を結びました。この動きは、今後始まるガスの小売り自由化でもあり得るでしょう。

一見、ライバルのようにも思える電気とガス。今後更に提携が進むことで、より魅力的なサービスやプランが発表される可能性も。今後の動きに注目です。