FIT制度のイメージ
FIT制度とは、再生可能エネルギーの普及をめざして2012年7月にスタートした、再生可能エネルギーの固定価格買取制度。FIT制度の根拠となるFIT法の改正法が、2016年5月の国会で成立しました。何が変わるのか、要点を解説します。

1. そもそもどんな制度?

FIT制度とはそもそもどんな制度なのでしょうか。

資源エネルギー庁が作成したガイドブックによると、FIT制度とは
「再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを、国が約束する制度」
のこと。

現在はまだコストの高い、再生可能エネルギーの導入を進めるための制度です。

電力会社が買取る際の費用は月々の電気料金に含まれていて、私たちを含め電気を利用する全ての人から、再生可能エネルギー賦課金として集められています。徴収されているなんて知らなかった! というあなた。一度、電力会社からの検針票を確認してみるといいですよ。

2. 対象となる再生可能エネルギーは5つ

FIT制度の対象となる再生可能エネルギーは全部で5つ。

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 地熱発電
  • バイオマス発電

このいずれかを利用して、国が定める要件を満たす設備を設置後、新しく発電を始める場合にFIT制度の対象となります。原則として発電した全量が買取対象となりますが、住宅用など10kW未満の太陽光の場合は、自宅で消費して残った分が買取対象です。

2-1. 太陽光発電

一般的になじみ深いのが、この太陽光発電ではないでしょうか。一般家庭でも設置できる小規模なものから、メガソーラーといった大規模なものまで、いろいろな場所で見ることができます。

2009年〜2010年は住宅用の売電価格が48円/kWhの10年固定、2012年からは産業用の10kWh以上が40円/kWhで20年固定となったため、これ以降広く日本に普及しました。現在は売電価格が10kW未満の家庭用で31円〜33円/kWh、10kW以上の産業用で24円/kWhとかなり下がっているため、以前ほどの勢いはありません。

非常時の電源として利用したり、他と比べてメンテナンスが簡単といったメリットがありますが、発電量が天候に左右されやすいデメリットも。天候だけでなく、太陽が顔を出さない夜間も発電できません。発電設備が一定の場所に集中すると配電系統の電圧上昇にもつながるため、対策費用が必要になる点もデメリットです。

投資家や企業からすると、太陽光発電は減価償却が大きく、売上の波が少ないため、節税方法のひとつとして今も人気があります。

2-2. 風力発電

こちらも比較的、目にすることが多いもの。学校のような公共施設に設置される小型のものから、ウィンドファームと呼ばれる大規模なものまであります。

太陽光と違い、風さえ吹けば発電できるので夜でも発電可能。規模が大きくなれば、コストも抑えられます。しかし、大規模なものを作るには広い敷地が必要。また、風力発電に適した風が吹く場所が東北や北海道などに集中しているため、全国規模で運用するためにはまだまだ検討が必要です。

2-3. 水力発電

水の力を利用して発電する、水力発電。分かりやすいものとしては、ダムが挙げられます。ダムのような大規模なもの以外にも、用水路や河川を利用して発電する中小規模のタイプも。

水力発電は安定して発電でき、中小規模のものであれば今後も開発できる可能性のある場所が多く残っている点がメリット。一方で、開発コストが高いことや水利権の調整といった課題も、まだ残されています。

2-4. 地熱発電

火山国である日本は、地熱発電に関しては世界で第3位の資源を持つと言われています。地下に蓄えられているエネルギーを蒸気や熱水として取り出し、タービンを回して発電する方法です。

時間を問わず発電でき出力も安定していますが、開発期間が長く高額となる点は課題。開発地域も温泉や公園施設などと重なることが多いため、開発に取り掛かるまでの調整も必要となります。

2-5. バイオマス発電

バイオマスとは、動植物などの生物資源のこと。木や農作物の残り、食品廃棄物など、さまざまな資源を利用して発電しています。

天候に左右されにくく、資源の有効活用ができるメリットがある一方、原料の安定供給や運搬、保管などにコストがかかるデメリットがあります。

3. 改正の目的やポイントは?

2014年度の時点で、全電源に対して再生可能エネルギーが占める割合は、およそ12.2%でした。2030年には現在のおよそ2倍となる、22−24%を達成することを目標としています。

ただ、再生可能エネルギーの割合を増やすとなると、それなりにコストもかかります。また、現在のFIT認定のうち、およそ9割が事業用太陽光発電となっていて、電源間のバランスもうまく取れていません。さらに、2014年には事業用の太陽光発電が急速に普及した結果、電力の安定供給に支障をきたす恐れがあるとして、九州電力が接続を保留。事業者の間でトラブルになりました。

こうした問題に対処し、2030年の目標再生可能エネルギー比率を達成するためにも、FIT制度を見直す必要が出てきたのです。資源エネルギー庁によると、今回の改正、ポイントは次の5つです。

3-1. 未稼働案件の発生を踏まえた新認定制度創設

実は、平成24−25年度に認定した案件のうち、平成27年12月末時点で約30%の案件が未稼働となっています。原因は太陽光の売電価格が見直される前に、滑り込み的に申請を提出した事業者が多かったため。

こうした事態を防ぐため、発電事業の実施可能性を確認したうえで認定するような、新たな制度を創設することとしています。
(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律第9条)。

3-2. 適切な事業実施を確保する仕組み導入

3-1.の新制度では事業実施前の審査だけでなく、実施中の点検・保守、終了後の設備撤去等の遵守を求めるとともに、違反時の改善命令や認定取消も可能としています(第9条・第13条・第15条)。

3-3. コスト効率的な導入

再生可能エネルギーの普及が進む一方、私たちの負担は年々増加しています。負担を軽減するためにも、中長期的な買取価格の目標を設定したり、事業用太陽光発電については入札制度を導入することも(第3条〜第8条)。

現在、一律で再生エネ賦課金が減免されている電力多消費事業者に対しても、省エネへの取り組みや国際競争の状況によって、個別に減免率が設定されるようになります(第37条)。

3-4. 地熱等のリードタイムの長い電源の導入拡大

太陽光発電が新規参入の9割を占める現行のFIT制度。バランスの取れた電源開発のためにも、開発に長い時間を要する地熱発電などは数年先の認定案件の買取価格を提示することが可能となります(第3条)。

現行では先の見通しが立たないために、地熱など開発に時間がかかるものは敬遠される傾向がありました。改正後は開発段階から買取価格の見通しが立つようになるため、太陽光以外の電源の導入が進むことが期待されます。

3-5. 電力システム改革を活かした導入拡大

これまでは小売電気事業者に課せられていた、再生可能エネルギー電気の買取義務。改正FIT法では、一般送配電事業者に買取を義務付けることに(第16条)。これにより広域運用を可能にし、再生可能エネルギーの導入がより一層進むことを目指します。

4. 2017年4月に施行される改正FIT法

今回改正されたFIT法は、2017年4月に施行される予定です。環境問題などを考えると、再生可能エネルギーが普及するのは嬉しいけれど、私たちの負担が増えるばかりだと困ってしまうのも事実。また、電気はたくさん発電すればそれでいいというものでもなく、需要と供給のバランスが取れている必要があるうえに、保管しておくこともできません。

安定してバランスよく再生可能エネルギーを普及させるためにも、今回のFIT法の改正が上手く機能すると良いですね。

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