エネルギーシステム一体改革のイメージ
2016年4月の電力自由化、そして2017年4月に予定されている都市ガス自由化。これらはいずれも、国によるエネルギーシステム一体改革の一環です。

私たちの暮らしにも深く関係するこの改革ですが、そもそもどんな改革で、何を目指しているのでしょうか。

エネルギーシステムの一体改革が目指しているもの

電気やガス(都市ガスおよび簡易ガス事業。LPガスは該当しません。)はこれまで、規制によって地域ごとに契約先が決められていました。関東圏であれば電気は東京電力、都市ガスは東京ガスといった具合です。

資源エネルギー庁によると、エネルギーシステムの一体改革では縦割りだった各市場の垣根をなくし、総合的なエネルギー市場を創出。次の2点を目標としています。

① 日本の成長をけん引する産業へ

革新的な技術を導入することで、これまで以上に効率的に発電したり、より一層の節電も可能になります。さらに、規制の撤廃により様々な業界から多種多様な企業が参入。異なるサービスが組み合わさることで、イノベーションの創発にもつながります。

このほか、電気やガスといった垣根を超えた総合エネルギー企業による、海外市場の開拓や獲得も。日本国内に閉じることのないエネルギー市場を創りだすことで、日本の成長をけん引する産業となることを目指します。

② 消費者利益のさらなる向上へ

会社が決まっていたことで、料金プランの選択肢も少なかった電気や都市ガス。節約しようと思ったら、「とにかく使う量を減らす」以外に方法がありませんでした。

しかし、エネルギーシステムの一体改革により、電気も都市ガスも自由化がスタート。事業者が増え、様々な料金プランが発表されました。私たち消費者は選択肢が広がり、これまで以上にお得な料金や、ライフスタイル、価値観に合った事業者を選べるようになりました。

異なるサービスとの組み合わせにより、これまでなかった割引や新しいサービスも生まれています。

電力・ガスシステム改革の目的とは

電力・ガスシステム改革には、いくつかの目的があります。

① 電力および都市ガスの安定供給確保

電力の場合、これまでは電力会社ごとに発電所を作り、自社管内に送電していました。しかし2011年の東日本大震災では、東京電力管内で電力が不足する事態に。計画停電を実施することでこの状況を乗り切ったことは、記憶に新しいかと思います。

これをふまえ、2015年4月にすべての電気事業者が加入する「広域的運営推進機関」を創設。この機関を司令塔にして、地域を超えて電力を融通することで停電が起こりにくくします。また、再生可能エネルギーや自家発電など、多様な電源を活用することによる安定供給も目指しています。

ガスについては、ガスの導管網を新たに設置したり地域を超えて相互接続することで、安定的に供給することを目指します。都市ガスはガス管を通して供給されているため、地震などの災害時には使えなくなってしまうことも。災害時でも安定して供給するためにも、導管網の整備は欠かせません。

② 料金の最大限抑制

事業者が増えることで、価格競争がおこります。小売業者は魅力的なプランやサービスを提供しなければ消費者に選んでもらえません。供給する側も、企業努力などによって効率的な発電・供給をしなければ、コストがかかるだけになってしまいます。

このように、料金を最大限抑制することで私たちの暮らしがより良いものになることを目指しています。

③ 利用メニューの多様化、事業機会拡大

エネルギーシステム一体改革の一環である、電力および都市ガスの自由化。様々な新規参入事業者により、私たち消費者は選択肢が増え、会社を自由に選べるようになります。電気やガスと何らかのサービスを組み合わせて割引になるセット割や、ポイント付きのプランなど、これまでになかったサービスを受けられることも。

一方の事業者側にとっても、新規事業の機会が増えるというメリットが。電気や都市ガスと組み合わせて自社のサービスを提供するなど、新たなビジネスチャンスが生まれます。既存の事業者は新規事業者に既存の顧客を奪われる立場になるものの、他エリアへの進出により事業を拡大することができます。

このように、消費者と事業者の双方に良い結果をもたらすという点も、制度改革を進めるうえでは重要なことと言えるでしょう。

④ 天然ガス利用方法の拡大

これはガスシステム改革にあてはまるものですが、ガス導管網の整備や蓄電池、都市ガスを利用したコージェネレーションシステムなど、これまでになかった新しい天然ガスの利用法を提案できる事業者の参入を促します。

天然ガスは化石燃料の一種ですが、石炭など他の化石燃料と比べて環境への負荷が少ない資源です。温暖化の原因となる二酸化炭素や、光化学スモッグの原因となる窒素酸化物の排出量も少ないうえ、大気汚染の原因となる硫黄酸化物を全く排出しないという特徴があります。さらに、天然ガスは石油と違って世界中に分布。今後も安定して供給することが可能な資源なのです。

天然ガスは都市ガスだけでなく、電源の大部分を占める火力発電の燃料でもあります。環境に優しく安定供給ができるという特徴を持つ天然ガスの利用を拡大することは、環境に優しくかつ安定したエネルギー事業を行ううえでも重要なことなのです。

電気・ガスともに改革の真っただ中

電気は2016年に、都市ガスは2017年に小売自由化がスタートします。しかし、これで改革が終わりではありません。最終的には、電気の送配電・ガスの導管部門を法的に分離することを目指しています。電気は2020年に、ガスは2022年に送電網や導管網が、より公平に利用できるようになります。

更に詳しくはこちら
都市ガス自由化と電気の関係とは

他の先進国を後追い

実はこれらのエネルギー改革は、すでに欧米で行われています。日本はその後を追いかける形で、欧米のシステムの良いとこ取りをしようとしているのですが、果たして成功するか、今後に注目です。

海外のエネルギー改革について詳しくはこちら
海外の事例で分かる、電力自由化の未来と問題点

国による制度改革は、何だか難しくてよく分からない・・・と思ってしまいがちですが、エネルギーシステムの一体改革は私たちの暮らしにも深く関係しているもの。身近な電力自由化や都市ガス自由化も、改革の一環です。お得な料金やサービスが増えていることからも、私たち消費者にとっては嬉しい改革と言えるのではないでしょうか。