燃料費調整の表示
月々の電気料金に含まれている、燃料費調整額。気にする人も少なければ、毎月知らない間に支払っているものかもしれませんが、その中身ってあまり知られていません。一体どんなものなのでしょう。

燃料費調整制度とは

私たちが普段使っている電気。この電気はどうやって発電されているのでしょうか?

日本における電源構成として最も比率が高いものは、火力発電です。

2014年度は

  • 火力発電:87.8%
  • 再生可能エネルギー:12.2%

でした。なお、2014年度は東日本大震災後で原子力発電所が全て停止していたため、原発による発電は0%。

参考までに震災前の2010年では、

  • 火力発電:61.8%
  • 原子力発電:28.6%
  • 再生可能エネルギー:9.6%

となっていました。

いずれにせよ、火力発電の占める割合が一番大きいことには変わりありません。

この火力発電の燃料には、原油や石炭、天然ガス(LNG)などが利用されています。これらの燃料は国内ではほとんど産出されないため、輸入に頼らざるを得ないというのが現状。ガソリン代が毎週変わるのと同じように、燃料の価格も変動します。

火力発電燃料の価格変動を電気料金に反映させるため、その変動に応じて毎月の電気料金を自動的に調整するのがこの燃料費調整制度です。

元々は電気事業の経営効率化のために導入された

燃料費調整制度が導入されたのは、今から20年前の1996年(平成8年)1月。その前年の1995年(平成7年)、電気事業審議会料金制度部会の中間報告を踏まえて導入されました。

為替レートの変動といった経済情勢の変化をできる限り速く電気料金に反映すること、燃料価格や為替変動といった外的要因を外部化することにより、電気事業の経営効率化の成果を明確にすることがその目的でした。

現行制度になったのは2009年5月以降

2008年(平成20年)にはこれまでにないほど燃料価格が大きく変動したため、より迅速にこの変動分を電気料金に反映させるため、そのタイミングが見直されます。

2009年(平成21年)5月分の電気料金以降は、原油・石炭・LNGそれぞれについて、まずは3か月間の貿易統計価格に基づいて平均燃料価格を算定。そこで算定された平均燃料価格(実績)と基準燃料価格との比較による差分から燃料費調整単価を算定し、電気料金に反映させています。

燃料の価格変動が実際の電気料金に反映されるのは、2か月後の電気料金。
例えば、1月から3月の貿易統計価格に基づいて算定された燃料費調整単価は、2か月後の6月分の電気料金に反映されるようになっています。電気料金に含まれる燃料費調整額は、燃料費調整単価×使用電力量(kWh)で算出されます。

実際のところ、どのように調整されている?

燃料費調整単価ってどのようにして算定されるのでしょうか。

燃料費調整単価は、
(平均燃料価格−基準燃料価格)×基準単価÷1,000
で算定されます。

基準燃料価格や基準単価はエリアによって異なるので、今回は関東エリアを例に考えてみます。

なお、東京電力エナジーパートナーのホームページによると、2016年10月分の燃料費調整単価は−4.95円/kWhでマイナス調整となっています。マイナス調整になる理由も、算定式をみれば分かります。

平均燃料価格

平均燃料価格は、原油・石炭・LNGそれぞれの3か月の貿易統計価格(実績)と、換算比率を乗じて算定。平均燃料価格は原油換算で算出するため、単位を合わせるために燃料ごとの換算比率が用いられています。

具体的な算定式は、

平均燃料価格(原油換算1klあたり)
=平均原油価格×原油換算係数
  +平均LNG価格×LNG換算係数
   +平均石炭価格×石炭換算係数

この数式に基づいて2016年5月から7月の平均燃料価格を算定すると、関東エリアでは22,500円となります。

基準燃料価格

基準燃料価格は料金設定の前提となる平均燃料価格のこと。関東エリアの場合、原油換算で1klあたり44,200円となっています。

平均燃料価格が基準燃料価格を上回った場合はプラス調整となり、反対に下回った場合はマイナス調整となります。今年5月から7月の平均燃料価格は22,500円なので、マイナス調整になるというわけです。

基準単価

基準単価とは、平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の燃料費調整単価のこと。これが基準単価として定められていて、関東エリアの場合は1kWhにつき22.8銭となっています。

このようにして算出された2016年10月分の燃料費調整単価が、−4.95円/kWhとなるわけです。

燃料費調整単価ってどれくらい変動している?

2016年10月分の電気料金では、マイナス調整となっている燃料費調整単価。10月以前の単価はどれくらいだったのか、気になりますよね。今回は東京電力エナジーパートナーが公表している、過去2年分の従量制に関する燃料費調整単価を表にしてみました。

【燃料費調整単価推移】

関東エリア中部エリア関西エリア
1kWhにつき1kWhにつき1kWhにつき
2016年10月分-4.95-5.93-4.01
9月分-4.92-5.84-4.05
8月分-4.67-5.45-3.99
7月分-4.26-4.92-3.8
6月分-3.88-4.51-3.52
5月分-3.28-4.01-3
4月分-2.78-3.66-2.53
3月分-2.3--
2月分-1.96--
1月分-1.73--
2015年12月分-1.6--
11月分-1.6--
10月分-1.73--
9月分-1.62--
8月分-0.89--
7月分-0.16--
6月分0.89--
5月分1.85--
4月分2.62--
3月分2.83--
2月分2.55--
1月分2.33--
2014年12月分2.23--
11月分2.28--

2016年3月以前について中部エリアと関西エリアは数字が入っていませんが、これは電力自由化前で供給エリア外だったためです。過去2年分を振り返ってみると、燃料費調整単価はだんだん下がってきていますね。この2年で最も単価が高かった2015年3月と比べると、2016年10月は7.78円も安くなっています。

このようにして、燃料費の変動は私たちの電気料金にもしっかりと反映されているんですね。

新電力ではどういう扱いになっている?

この燃料費調整制度は、既存の地域電力会社と同じように新電力でも導入されています。現時点では従来の電気料金と比較しやすいように、大手電力会社と同じ燃料費調整単価を採用している新電力がほとんどです。

ただこの先、地域電力会社と新電力の燃料調整単価に差ができることが予想されます。なぜなら小売事業者によって電源の構成比率などが異なるためです。

燃料費調整制度はあくまでも、火力発電の燃料費の変動に対応するための制度。そのため、小売事業者の電源構成によっては、独自の燃料費調整単価を採用するところが出てくるかもしれません。

また、電力自由化では電気料金の設定に対する規制もなくなりました。そのため、燃料費調整額自体、上乗せしない事業者が表れても不思議ではありません。

これから電力会社を選ぶときには、この燃料費調整額の有無もチェックしてみてくださいね。

新電力の選び方はこちらを参考に

新電力会社シェアトップ15社の電気料金を比較しています。