原子力発電所イメージ
東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、原発に対する関心が高まりました。一方で、電力自由化が始まったことにより、私たちは電力会社を自由に選べるように。「原発由来の電気を利用しない」という意思表示も可能になりました。では、電力自由化で脱原発ってできるんでしょうか?

発電所から家に電気が届くまで

電力自由化と脱原発の話の前に、そもそも発電所で作られた電気はどのようにして私たちの家まで届けられているのでしょうか。

電気は様々な方法で作られている

私たちが使う電気は、様々な方法で発電されています。

現在、日本で一番多い発電方法は火力発電。石炭やLNG、石油などを燃焼させることで電気を作る方法で、全体の8割以上を占めています。他には水力発電、太陽光や風力といった新エネルギーを利用した発電。そして、数自体は少ないものの、再稼働した原発によるものもあります。

一度集められてから送られる電気

各発電所で発電された電気は、発電所から直接、家庭などの需要家に送られるわけではありません。一度集められ、利用する場所に応じた電圧に変圧されたりしながら、私たちの家まで届けられます。

つまり、私たちが使っている電気は、様々な発電方法で作られたものがミックスされたもの、というわけです。

「特定の発電方法の電気だけを使わない」ことは難しい

どの発電方法で作られた電気でも、その質はみな同じ。そのため、ミックスされた電気の中から「ある特定の発電方法の電気だけを使わない」というのは、実質不可能なんです。

これは川をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。

大きな川にはいくつもの小さな川から水が流れ込みます。大きな川には、小さな川から流れ込んだ水が混ざり合って流れていますよね。その混ざり合った川の水から、ある特定の川から流れ込んだ水だけを取り除くことはできませんよね。

電気もこれと同じ。小さな川が発電所、大きな川が送電線というわけです。電気を一度集めて送るという仕組みである以上、そもそも私たちは発電方法によって使う電気を選ぶことは難しいのです。

電源構成も非公開の企業が多い

自社で発電設備を持たない電力会社などは、どこからか電気を仕入れなければ電気の販売ができません。その仕入先を示しているのが「電源構成」。これを見れば、例えば火力発電8割、水力発電2割といった感じで、電気の調達先を知ることができます。

特定の電気だけを使うことは難しいですが、電気の調達先さえ分かれば、原発由来の電気を使わないということも可能ですよね。

この電源構成、日本では必ずしも開示しなければならないわけではないんです。あくまでも「開示は望ましい行為」という位置づけに。そのため、開示していない企業もたくさんあります。

なお、ドイツなどでは電源構成の開示は義務。そのため、消費者にとって電源構成は、電力会社を選ぶときの判断基準の1つになっています。

今後どれだけ情報開示が進むのか、注目したいポイントです。

脱原発は難しい!?その理由とは

特定の発電方法で作られた電気を使わないのは難しいけれど、電源構成を見て原子力発電以外で発電された電気を調達しているところをたくさんの人が選べば、脱原発につながるのでは?と思いますよね。

でも、そう簡単に脱原発が実現できるというものでもないんです。

優先的に利用する電源と定められている原子力

あまり知られていないかもしれませんが、電気というものは供給量と使用量を一致させておく必要があるもの。これを「同時同量」と言います。供給量が少ないと停電してしまうので分かりやすいと思いますが、供給量が多すぎても電気として貯めておくことは難しいものなんです。

そのため、電力会社では日々、供給量を調整してバランスをとっています。例えば、供給量が足りなくなりそうであれば多くの発電所を稼働させ、逆に使用量が少なくなりそうなときは稼働させる発電所を減らすというわけです。

このとき、発電方法によって稼働させるかどうかの優先順位が決められています。優先順位が高い(=優先的に利用される)発電方法は「長期固定電源」と呼ばれ、水力発電、地熱発電、原子力発電がそれにあたります。

確かに、「電気を安定的に供給する」という観点から考えると、原子力が長期固定電源にあたるのも納得です。しかし、長期固定電源による発電が優先される分、それ以外の発電方法によるものは発電量が調整されてしまうことになるのです。

現在は稼働している原発自体が少ないため、その発電量も少ないのが現状です。しかし、長期固定電源とされている以上、再稼働が進めば原発由来の電気が増えてくることも十分考えられます。

電気料金にも原発推進の原資が含まれている!?

私たちが支払う電気料金には、純粋な電力使用量のほかに、様々な諸費用が含まれています。

例えば、燃料費調整額。これは火力発電の燃料となる原油や石炭、LNGの価格変動を電気料金に反映させたもの。ほかにも、再生可能エネルギーによる発電を促進するための、再生可能エネルギー発電促進賦課金といったものもあります。

このように、電気料金の内訳として明示されているものもあれば、明示されていないものも。その一つに、電源開発促進税というものがあります。これは、電源(発電施設など)を安定的に運営したり利用を促進するために徴収されているものですが、この一部は原発にも利用されています。

つまり、私たちは無意識のうちに原発の利用を促進するために使われる費用を支払っているということなんです。

原発に依存しない社会を作ることは可能

電力自由化により脱原発を目指すのは、難しいこと。地球温暖化など環境問題も深刻化しているうえに、資源が乏しい日本。原発を利用せざるを得ないという一面があるのは事実です。そして私たちも、原発にお金を払いたくないと思っていても、電気料金の中に含まれている以上、支払わないことは不可能です。

しかし、電気の調達方法が分かれば、原発由来の電気をなるべく使わないようにすることは可能。あなたができることから始めることが、原発に依存しない社会作るための第一歩になることは間違いありません。

早速、その最初の一歩を踏み出してみませんか?